法的効力を持つ遺言の7項目とは?

① 相続分の指定または指定の委託

民法で決められている法定相続分と異なる分配をしたい場合にします。

(ア)法定相続人に法定相続分でない分配をしたい

[例1] 事業を継承させるため会社資産すべてを長男に相続させたい
[例2] 農業後継者となる長男に、農業経営維持のための農地細分化防止を目的とする農地の単独相続をさせたい
[例3] その他の理由で法定相続分どおりの財産分与をしたくない。

◎[例1] [例2]の場合、遺言として意思を残しておいても、法定相続人から遺留分の減殺請求があれば目的を達成できません。そこで、目的を確実に達成するためには、相続人(長男)以外の法定相続人に下記①②③のいずれかの手続きをとってもらう(書いてもらう)必要があります。

① 相続開始前に長男以外の相続人から、遺留分の放棄をしてもらう
(家庭裁判所の許可必要)
遺留分・・たとえ遺言により被相続人が決めた遺贈であっても、主張することで最低限守られる法定相続人の相続分
(配偶者・子は法定相続分の1/2、直系尊属1/3、兄弟姉妹はなし)

② 相続開始後に長男以外の相続人から、相続放棄をしてもらう
(家庭裁判所への申述必要)
放棄・・・プラス財産マイナス財産(借金)すべての相続を拒否すること。
法定相続人単独での家庭裁判所申述が可能。

③ 相続開始前に相続分不存在証明書(家庭裁判所への手続き不要)を書いてもらう
生前に、被相続人より特別受益・生前贈与等があり、相続分はありませんという自認書

[例4] その存否及び金額で争いになりやすい特別受益分・寄与分を明らかにしておきたい。
特別受益・・・・・特定の法定相続人に生前に財産を与えること
   (例) 長男の家屋の新築に際しお金を援助した
   (例) 次男だけ私立大学の医学部に行かせた

寄与・・・・・・・被相続人の財産の増加・維持に貢献すること
   (例) 長男が代々受け継がれている家業の後継者として約20年間事業を手伝っている
   (例) 長女が寝たきりの被相続人の介護を長年に渡りしてきた

[例5]  三男には重大な侮辱を受けたので廃除したい。
廃除・・・・・被相続人に対する虐待・重大な侮辱、著しい非行があったときに限り認められる被相続人の意思により予定相続人の相続権を奪う制度。
家庭裁判所の審判の決定を経て確定する。

[例6] 歩行障害のある次男の将来が心配なので、多めに相続させたい。

(イ)法定相続人でない人に財産を遺したい

[例1] 内縁の妻
[例2] 認知をしていない子
[例3] 後妻の連れ子(養子縁組のない)
[例4] 夫に先立たれた長男の嫁
[例5] おい・めい(被相続人に子がなく、姉妹の子をわが子のように思っているケース)
[例6] 生前にお世話になった人
[例7] 身寄りのない友人
[例8] 寄付をしたい学校・団体

(ウ)マイナス財産があるので知らせておきたい

本人名義の債務のみならず、被相続人が連帯保証をしている債務で生前に支払義務の生じたもの(死後に生じた債務については継承しない)や裁判上の地位などのマイナス財産も、それがあることを知った時から放棄もしくは限定承認をせずに3ヶ月経過すると、それらマイナス財産もすべて相続したものとみなされます。(単純相続)
ただし、身元保証などは保証人被保証人の個人的な信頼関係を基にする一身専属的なものなので、生前に債務が確定しているものを除き相続しない。

限定承認・・・・プラス財産の限度においてマイナス財産を支払う。
        相続人全員が一致して家庭裁判所に申述することが必要。

② 遺産分割方法の指定または委託

 (ア)単に相続割合のみを指定する遺贈(包括遺贈)だと、優良相続財産の取り合いになりかねない場合
  [例] 同じ評価額でも売却して現金化しにくい賃貸アパートより現金預金のほうがいい
 (イ)特定の相続人に特定の財産を相続させたい場合
  [例] 妻の今後の生活を守るため妻に土地家屋を相続させる
 (ウ)遺産の分割を禁止したい場合相続開始後5年のみ有効

③ 相続人相互の担保責任の指定

債務などの負の相続財産の担保責任を負う場合、原則的には、各相続人は相続割合に応じた責任を負うが、遺言でその割合を変更できる。

④ 認知

生前は表ざたに出来ないが、死後認知したい子がいる場合

⑤ 減殺方法の指定

相続人の遺留分を侵害した遺贈があった場合で、相続人から遺留分減殺請求があったとき、減殺をどのように行うかを予め決めておくことが出来る。

[例] 私の全財産は妻に相続させることを希望するが、万が一、法定相続人より遺留分の減殺請求がされた場合は、私の遺産の中から①現金及び預貯金②株式・国債等証券③その他一切の財産④賃貸不動産⑤居住不動産の順に必要とされる財産額まで減殺するものとする

⑥ 後見人及び後見監督人の指定

自分の亡き後、未成年の子に後見人がいなくなるときに、新たな後見人及び後見監督人を指定できます。

⑦ 遺言執行者の指定及び指定の委託

遺言執行者は通常相続人の中から選ばれることが多いようです。
しかし、前述のように相続人間の利益が相反する遺言を執行する場合に、その当事者の相続人 を執行人に就かせることは、迅速・公平な職務執行が危ぶまれる点においても、また他の相続人 の理解と協力を得にくいという点においても避けるべきだと思われます。
このような場合は、利害関係のない親族以外の第三者で信頼のおける人物を遺言執行者に 指名することで、遺言を忠実に執行することができ、無用な相続争いをさけることが出来 ます。

遺言執行者・・・・・相続財産の保全管理から相続執行手続きに関する一切の法的権限を持つ人