遺贈と死因贈与

遺贈と死因贈与

遺贈とは、遺言により相続人以外の第三者に、財産の全部または一部を無償で譲与するものです。遺贈を受ける人(受遺者)の意思とは無関係に、遺言者の一方的な遺言により生じます。遺贈には、厳密には包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。一方、死因贈与とは、贈与する者の死亡によって効力が生じる生前の財産の贈与契約ことをいいます。

包括遺贈

包括遺贈とは、財産の全部または一定の割合を指定して譲渡することです。

包括受遺者は遺産分割協議に参加することも認められていますが、贈与される遺産の割合に応じて債務も引き受けなければなりません。
また、相続人と同様に遺贈の放棄や限定承認をすることが出来ます。

特定遺贈

特定遺贈とは、特定の財産について指定して譲渡することです。例えば、土地や建物、現金などを指定して譲渡する形になります。

遺贈の承認・放棄

特定遺贈の受遺者は、いつでも自由に遺贈を承認あるいは放棄する(断る)ことが出来ます。しかし、いつまでも承認または放棄をしないままだと法律関係が不安定なままとなるため、特定遺贈の遺贈義務者や利害関係人等は、相当の期間を定めて承認するか放棄するかはっきりするよう催告することが出来ます。 その期間内に受遺者の回答がなければ承認したものとみなされます。

包括遺贈の受遺者は、相続人と同じく自分が受遺者になったことを知ってから3ヶ月以内に、遺贈の放棄または限定承認の申立てをしなければなりません。これをしない場合は単純承認したものとみなされます。

遺贈の留意点

遺贈は、相続分に対して優先されますが、例え遺贈によって財産を譲渡した場合でも、遺留分を侵害されている場合は、法定相続人は受遺者に対し遺留分減殺請求を行うことが出来ます。また、遺贈は寄与分に対しても優先されます。

遺贈の効力の発生日は、原則として遺言者の死亡時となります。

遺贈は受遺者固有の権利であって、代襲されることはありません。従って、相続開始前に受遺者が亡くなれば、遺贈自体が消失します。

遺贈により遺産を受遺した場合は、贈与税ではなく相続税が適用されます。

死因贈与

遺贈が贈与者の一方的な遺言により生じるのに対し、死因贈与では贈与者と受贈者との間で生前に合意(契約)をしていることが前提となります。

死因贈与の場合、書面によって契約を結ぶ必要はありませんが、口頭では贈与契約を一方的に取り消すことも可能であるため、契約書を取り交わしておく方が受贈者にとっては安心です。

遺贈の場合、遺言という原則的に受贈者に公開されないものによってなされるので、贈与の内容を知られたくない場合などに使用されます。対して死因贈与は、契約によってなされるため、受贈者に贈与の内容を知らせるメリットがある場合などに使用されます。